通信販売の落とし穴！安いAGA治療薬を通販で購入するリスク

AGAの治療薬は大きくわけて2種類あります。この2種類を分かりやすくするためによく使われる言葉が守り系・攻め系という表現です。抜け毛の進行を抑制するものを「守り系」、発汗を促す作用があるものを「攻め系」というイメージを持っていただければと思います。またそれぞれの薬の働きを知るために、まずはAGAが発症するメカニズムを知る必要があります。今までの記事で何度か触れてきましたが、改めて簡単に説明をさせていただきます。

▶AGA発症のメカニズム
男性ホルモンにはテストステロンと呼ばれるものがあり、テストステロンは男性の機能の維持や筋肉の量を増やしたり肥大させる作用などがあります。このテストステロンと呼ばれるものと5αリダクターゼ（5α還元酵素）と呼ばれるものが結びつき「ジヒドロテストステロン（DHT）」と呼ばれる男性ホルモンに変換されます。このジヒドロテストステロン（DHT）がホルモン受容体に取り込まれて、毛母細胞の働きを低下させ毛髪の成長サイクルが短くなり、髪の毛が成長する前に抜けてしまいます。これがAGAの原因だといわれています。
▶「守り系」の治療薬の効果
一般的に守り系の治療薬は、5αリダクターゼを阻害する働きがあります。この働きはAGAの原因物質となるジヒドロテストステロンを生成を阻害する目的があります。今ある髪の毛を守るイメージです。
▶「攻め系」の治療薬の効果
血行を促進することで頭皮の毛母細胞の働きを活性化し、髪の成長因子を増やすことで発毛を促す効果があります。髪の毛を強く太くする働きもあるため、髪の毛全体のボリュームアップを実感される方もいらっしゃいます。

▶プロペシア（承認）
最もよく知られているAGA治療薬が「プロペシア」です。プロペシアは、1997年にアメリカのメルク社によって開発され、今現在も世界中で使われている薬です。日本では2005年に初めて国内で認証されたAGA治療薬のため、薬の名前を知っている方も多いのではないでしょうか。主成分はAGAに効果があるとされている「フィナステリド」です。5αリダクターゼにはⅠ型とⅡ型が存在していますが、プロペシアはⅡ型を阻害する働きがあります。通常1日に1回、効果を感じるまで最低でも6ヵ月以上の服用が基本となっています。現在ではプロペシアのジュネリックも広く使わており、ジュネリックは2割りほど安く購入することが可能です。効果や副作用に大きな違いはありません。
主な副作用：肝機能障害、勃起不全などの性機能障害、うつ症状、発疹など
▶フィンペシア（未承認）
プロペシアと同じ有効成分「フィナステリド」をもつフィンペシア。大手製薬会社シプラ社が製造販売しているAGA治療薬で名前を聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれません。しかし実はフィンペシアは国内未承認薬のため、原則国内での処方を受けることができません。
副作用：肝機能障害、勃起不全などの性機能障害、うつ症状、発疹など
▶ザガーロ（承認）
グラクソ・スミス・クライン株式会社が開発した「ザガーロ」は、「デュタステリド」を有効成分としたAGA治療薬です。日本では2015年に認証された比較的新しい薬です。5αリダクターゼのⅠ型Ⅱ型の両方に作用するため、プロペシアより広い範囲での阻害効果を持っています。プロペシアで効果を感じることができなかった方でもザガーロでは効果を感じることができたといったこともあります。通常1日に1回、効果を感じるまで最低でも6ヵ月以上の服用が基本となっています。こちらもジュネリックが数多く存在しています。よくザガーロと比べられる薬に「アボルブ」がありますが、開発元も有効成分も同じでアボルブもザガーロと同様の効果を得られることがわかっています。しかしアルボブは前立腺肥大症の薬として認証されたもので、AGA治療薬としての処方はされていません。そのため基本的にはAGA治療専門クリニックでの処方は行いません。
主な副作用：肝機能障害、勃起不全などの性機能障害、うつ症状、発疹など

▶ミノキシジル外用薬（承認）
ミノキシジルは、1960年に米国のファルマシア・アップジョン社（現ファイザー株式会社）が開発した、高血圧治療薬です。しかしその後多毛症の副作用があることが認められ、1980年にAGA治療薬としてのミノキシジル外用薬が誕生しました。ミノキシジルを頭皮に直接塗布することで毛母細胞を活性化させ、発毛を促します。ミノキシジル外用薬はドラックストアなどでも購入することが可能で、どなたでも気軽に試すことができます。しかしドラックストアなどで売られているミノキシジル外用薬は販売できる濃度に制限があり、2%～5％のものがほとんどです。一方で医療機関で医師からの処方があれば、5％を超える濃度のものでも使用することが可能です。一般的に濃度が高いほど効果が高いと言われていますが、その分副作用の発生率が高くなるためドラックストアでの購入も注意が必要です。ミノキシジルは効果を感じるまで6ヵ月～1年と長い期間かかるのも特徴です。
副作用：初期脱毛、湿疹・かゆみなどの皮膚症状など
商品名：ロゲイン（未承認）
1980年に米国のファルマシア・アップジョン社（現ファイザー株式会社）が開発し、現在はジョンソンエンドジョンソンの米国子会社（マクニール社）が販売しています。ロゲインは「ミノキシジル」を主成分した外用薬です。世界で初めてミノキシジルを主成分とした発毛剤として発売されたため、広く認知されております。しかし日本国内では未承認の外用薬です。
副作用：副作用：心不全、動悸、息切れ、むくみなど
商品名：リアップ（承認）
「リアップ」という商品名にピンとくる方もいらっしゃるかもしれません。リアップは日本で唯一承認されている「ミノキシジル」を配合された発毛剤です。効果や内容はロゲインと同等ですので、日本国内で購入する場合にはリアップの方が買いやすいかと思います。他の外用薬と比べて比較的金額が高めですが、ラインナップがいくつかあり自分に合うものを選びやすくなっています。
副作用：副作用：心不全、動悸、息切れ、むくみなど
▶ミノキシジル内服薬（未承認）
ミノキシジル外用薬は国内で承認されていますが、実は外用薬はまだ国内で承認されていません。効果については外用薬と同等ですが、内服することで吸収率があがるため外用薬より内服薬の方がより効果を実感しやすい傾向にあります。効果が高い分、外用薬より副作用は発生しやすくなります。早い方で4ヵ月程度で効果を感じる方もいらっしゃいますが、一般的には効果を感じるまで最低6ヵ月といわれています。
副作用：心不全、動悸、息切れ、むくみなど

ここまで読まれた方で、「国内未承認薬なのに国内で処方されている薬もあるけれど、それっていいの？」「今処方されて飲んでいる薬は未承認薬に入っているのはなんでだろう」など疑問を持った方もいらっしゃるはずです。これには理由があり、国内で承認されていない薬でも医師が治療に必要であると判断した場合、AGA専門クリニックでは患者に対して処方することが可能となります。その際AGA治療の目的であることや、治療の根拠があり効果が期待できることなどを説明した上で患者の同意が必ず必要になります。この過程を踏むことにより、未承認薬でも医師からの処方を受け、安全に最大限配慮した環境で治療薬を使用することができるのです。

さまざまなものが通信販売で購入できる時代、AGA治療薬も例外ではありません。そんな通信販売のメリットは何と言っても、自宅にいながら商品の注文・受け取りができるという点だと思います。それに加えAGA治療薬は通信販売での購入の方が安く買えることが多く、医師の処方を受けるための通院も不要です。AGA専門のクリニックに行く、という部分も人によってはとても負担に感じてしまう方もいらっしゃるかもしれません。ですが通信販売であれば誰にも見られず、自分の負担もなく自宅で気軽に購入できてしまいます。通信販売を利用される方は、そういった通信販売のメリット面に惹かれて購入されている方がほとんどです。
①処方を受けるよりも安く買える
②通院の負担がない
③人目が気にならない
④自宅にいながら注文・受け取りが可能
まとめると通信販売を利用することのメリットは、上記にあげた4点といったところでしょうか。

通信販売のメリットを見て「自分も通信販売の利用をしたい」と思った方もいらっしゃるかもしれません。しかしメリット面だけを見て判断するのはとても危険です。ここでは通信販売の見えない落とし穴についてしっかり理解し、AGA治療薬を通信販売で買うことのデメリット面も一緒に確認していきましょう。

薬の偽物の流通は、AGA治療薬に限らずさまざまな薬から報告されています。一般的に未承認の薬を個人で利用しようとすると、「個人輸入」として通販サイトを介して購入するのがスタンダードな方法です。その通販サイトに偽物が紛れてしまっているため、気付かずに購入してしまい偽物の薬をつかんでしまうといったことが起きます。最近の偽物は見た目では分からないほど巧妙に作られており、内容成分などが正しい容量の物なのかなど普通の人には判断できません。

偽物の中には規定以上の成分が含まれていたり、そもそも薬の内容が違うものだったりなどその実態はさまざまです。そのため思っていた容量以上の成分を摂取してしまったり、身体に合わない成分と知らずに飲んでしまったりなどして健康被害につながる可能性があります。

なぜ医師の処方が必要なのか、なぜ通院が必要なのか。それは副作用にいち早く気付き正しい対処を迅速に行えるようにするためでもあります。そのためAGA治療薬を使用する際は定期的な血液検査や、正しい服薬指導などをクリニックで行います。持病や身体の状況によっては服用できない薬もあります。通信販売で薬を入手してしまうとこの過程がないため、自覚がないまま重篤な副作用を引き起こしてしまっていたり、間違った薬の飲み合わせをしてしまっていたりなどのトラブルが考えられます。

「医薬品医療機器等法」という法律をご存じですか？　これは日本国内で販売されている薬に適応される法律で、国内で販売される薬全て薬の有効性や安全性などの品質チェックを受けて合格したもののみ販売されています。しかく海外で販売されている薬の輸入となると、この品質チェックを受けていないために日本基準での「安全」とはいえない状態です。たとえ海外基準のチェックを合格していたとしても、日本国内の方が厳しく本来であれば国内で認証されないはずの薬が通信販売などで簡単に手に入ってしまいます。

薬による健康被害が発生した際でも国内できちんとしたルートで入手された薬であれば「医療品副作用被害救済制度」という救済制度を利用することができます。しかし個人輸入などで入手した薬にはこれが適応されず、万が一の際の治療費などが自己負担となってしまいます。個人輸入はあくまでも全てにおいて自己責任という扱いになるのです。

ここまで通信販売でAGA治療薬を買うデメリットの説明をしてきましたが、「危なそうな通信販売サイトで買わなければ大丈夫じゃない？」「名前の知れた大手通販サイトで買えば安心じゃない？」と思った方もいると思います。しかし、安心安全をうたっている大手通販サイトでも100%安全とは言い切れないのです。もちろん通信販売全てがいけない、ということではありません。しかしリスクを知らずに利用してしまうのは危険です。AGA治療薬などの認可は厚生労働省で行いますが、その厚生労働省からは注意喚起も発表されています。AGA治療薬だけに限りませんが、気になる方は一度目を通してみてください。偽薬が意外にも身近に潜んでいると実感できると思います。
（厚生労働省HP参照：https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/kojinyunyu/050609-1.html）

厚生労働省によって認められていない薬を個人輸入するのは違法ではないのか？　と疑問に思う方もいるかと思いますが、法律上違法ではありません。ただしこれにはルールがあり、個人輸入をする際は「自分のために使う薬を自分のために輸入する」行為のみ認められており、いかなる理由においても転売行為などは違法となります。自分が売らない、他人に渡さないということも大切ですが、フリマアプリなどで売られていても絶対に買ってはいけません。

AGA治療薬を通信販売で購入するメリット・デメリットについて解説してきましたが、いかがだったでしょうか。メリットよりも万が一の際のデメリットの方が大きいということをご理解いただけたのではないでしょうか。安全にAGAの治療や予防・対策を行うには、AGA専門クリニックを受診するのが一番です。自己判断せずに、まずは医師に相談するところから始めてみましょう。