抜けたらもう生えない？抜け毛の状態やAGAなど病気の可能性も

人間の髪は、ヘアサイクル（毛周期）という髪の生え変わりサイクルを繰り返して一定の量を保っています。
ヘアサイクルは「成長期」「退行期」「休止期」に分かれており、それぞれの期間を全うした髪が毎日100本程度抜け落ちます。
ヘアサイクルが乱れると抜け毛が増えて薄毛になると考えられるため、ここでしっかり正しいヘアサイクルについて見ていきましょう。

成長期は「早期」「中期」「後期」に細かく分類されていますが、ヘアサイクル全体の80〜90％の当たる最も長い時期です。
成人男性の成長期は3〜5年と個人差がありますが、成長期が長いほど髪は太く長く成長し、短いと細く短いまま抜けていきます。
成長期の特徴は以下の通りです。
・成長期早期：髪の元となる「毛母細胞」が「毛乳頭細胞」の指令のもと酸素や栄養を供給され活発に細胞分裂を始める時期ですが、毛母細胞は頭皮の最下部に存在するためこの時期の髪はまだ目に見えません。
・成長期中期：毛母細胞の細胞分裂がさらに活発になり、頭皮の外に押し上げるように伸びていく時期で、うぶ毛として目に見えるようになります。
・成長期後期：毛母細胞の細胞分裂が続いている時期で、髪の毛は最も太く長く伸びていくため、見た目や手触りにハリやコシが感じられます。

退行期は、3〜5年の成長期の間ずっと髪の成長を促していた毛乳頭細胞のはたらきが弱まり、毛母細胞から離れることで細胞分裂のスピードが緩やかになる時期です。
退行期の期間はおよそ2〜3週間で、毛周期全体の1〜2％と毛周期の中で最も短い時期にあたります。
退行期の髪の毛は、細胞分裂の低下によりメラニン色素を取り込む力が衰えるため、色が薄くなるという特徴があります。

休止期は、毛乳頭細胞がはたらかなくなって毛母細胞から完全に離れることで、毛母細胞の活動が完全にストップする時期です。
休止期は2〜3ヶ月程度続き、毛周期全体の10〜20％を占めています。
休止期の後半は「脱毛期」や「発毛期」と呼ばれることがあります。
これは休止期後半になると毛乳頭細胞が活動を再開し、毛母細胞が細胞分裂を始め新しい髪が生えてくることで新しい髪の毛に押し上げられるようにして古い髪の毛が抜け落ちる様子を表し、細胞分裂を停止した髪は頭皮に固定する力を失うため、シャンプーやブラッシングなどの刺激で簡単に抜け落ちます。
20代で生え際が薄くなっていたり、70歳を過ぎても髪の毛がフサフサな人がいるように、髪の多さには個人差がありますがこれにはヘアサイクルの長さが関係しています。
成人男性のヘアサイクルは一生の間に15回程度繰り返され、やがて髪の元となる細胞が寿命を迎え最終的には毛が生えなくなります。
1つの毛根のヘアサイクルは3〜5年と個人差が大きいため、毛周期の長さにより髪の量が変わることから、髪の量をキープして薄毛や抜け毛を対策するには、ヘアサイクルの成長期をなるべく長くすることが重要です。

自然なヘアサイクルが繰り返されている場合、抜け毛があっても新しい髪が生えてくるため薄毛になる心配はありません。
しかし、中には薄毛に進行する危険な抜け毛がありますので、ここでは正常な抜け毛と危険な抜け毛の特徴について解説します。
自分の抜け毛が正常か異常かチェックするための参考にしてください。

・抜け毛の本数が1日50〜100本程度
・抜け毛が太く長い
・抜け毛が黒くハリやツヤがある
成人男性のヘアサイクルの成長期は3〜5年で、その間毛母細胞が細胞分裂を繰り返し太く長く成長していくため、正常な抜け毛は太く長いという特徴があります。
細く軟らかいうぶ毛の状態から、栄養や酸素をたっぷり受け取りながら数年かけて太く長く成長していくため、抜け毛は先端にかけて細くなっていることや黒々してハリやツヤが見られることも特徴です。
髪の毛の端をつまんですぐに下に垂れ下がらず、地面と並行な状態をキープできれば正常な抜け毛と言えるでしょう。
髪の毛の根本は「毛球」と呼ばれており、毛母細胞や髪の成長を促す指令を出す毛乳頭細胞などが存在して丸くふくらんでいます。
さらに、成長を終えて自然に抜け落ちる段階の髪の毛は、髪を黒くする「メラニン色素」を取り込まなくなるため根本が白くなるという特徴も見られます。
そのため、抜け毛を観察して根本が白く、マッチ棒のように丸くふくらんでいる場合は自然な抜け毛だと言えるでしょう。

・抜け毛の本数が1日100本以上で何日も続いている
・抜け毛が細く短い
・抜け毛の根本が細く、ギザギザやいびつな形をしている
ヘアサイクルに異常が生じて成長期が短くなった場合、成長途中の髪の毛が急に抜け落ちるため、細いあるいは短いもしくは細くて短い、という抜け毛が増えます。
危険な抜け毛には、ハリやツヤが見られないことも特徴として挙げられますので、抜け毛を集めて観察したときに太く長い毛よりも細く短くハリやツヤがない抜け毛が多い場合は注意が必要です。
また、危険な抜け毛の場合は根本が小さく細いものやギザギザしているなど形がいびつであることが多く、色は黒い場合が多いという特徴があります。
これはなんらかの原因で毛母細胞がうまく細胞分裂できなかったことや、本来抜けるべき時期ではないときに急に抜けた危険な状態を表しています。

大量の抜け毛や細く短い抜け毛が増えるのには、いくつかの病気が原因となっている可能性があります。
ここでは代表的な脱毛症を6つ紹介します。

AGAはAndroGenetic Alopeciaの略称で、成人男性の3人に1人に発症する可能性がある脱毛症です。
病名の通り、発症には男性ホルモンと遺伝が大きくかかわっています。
男性ホルモンのひとつであるテストステロンは、体内に存在する「5αリダクターゼ」という酵素と結びつくと、「ジヒドロテストステロン（DHT）」という別の男性ホルモンに変換されます。
変換されたジヒドロテストステロンは、前頭部や頭頂部に多く存在している「アンドロゲンレセプター（男性ホルモン受容体）」に取り込まれて「脱毛因子（TGF-βとFGF-5）」を産生させます。
このためAGAでは脱毛因子のはたらきにより毛周期の成長期が短縮され、抜け毛が増えて薄毛の症状が現れます。

円形や楕円形の脱毛斑が突然できる病気で、脱毛班部分の毛がごっそり抜けることが特徴です。
頭部全体のどこにでも発症する可能性があり、年齢や性別関係なく発症するという特徴があります。
気が抜けるときに痛みやかゆみなどがないため、いつ発症したのか自分で気づかないことも多いと言われています。

脂漏性皮膚炎という皮膚炎が進行し抜け毛の症状が出る病気で、黄色っぽいベタベタしたフケが大量に発生することが特徴です。
かゆみは比較的少なく、頭皮以外に耳や首にも症状が出る場合がありますので見た目で判断しやすいという特徴があります。
原因ははっきりしていませんが、頭皮の常在菌であるマラセチア菌が異常繁殖することによるという説が有力で、乾燥により頭皮の皮脂が増えるなど頭皮環境の悪化がきっかけになりやすいことがわかっています。

ぬかのような細かく乾いたフケが大量に発生して、頭皮の毛穴を詰まらせることで抜け毛が増える脱毛症です。
頭皮の乾燥や合わないシャンプー剤や整髪料などの使用が原因のため、乾燥を防ぎヘアケアの見直しをするなど頭皮環境を整えることが必要です。

髪を引っ張り続けることにより毛穴に負荷がかかり、抜けやすくなる脱毛症です。
髪が長い人に起こりやすいことや、きつく縛ったり同じ分け目をずっと続けている人に起こりやすいという特徴があります。
男性の場合はヘアスプレーの長時間長期間の使用が原因となることがあるため、髪への負担をなるべく減らすことが大切です。

抜毛症とは、トリコチロマニアや抜毛癖とも呼ばれ、髪や眉毛など自分の体毛を引き抜きたい衝動を抑えられず抜いてしまう病気です。
小学高校学年から中学生にかけて多く見られますが、成人になってみられることもあります。
原因は主にストレスであるため、ストレス対策やメンタルケアが大切です。
抜毛症はヘアサイクルの乱れとは関係ないため、髪を引き抜く行動がなくなれば薄毛症状は改善が期待できます。

抜け毛は放置しているとどんどん進行し、薄毛になり戻らなくなる可能性があります。
ここでは自分でできる抜け毛対策について紹介しますので、抜け毛や薄毛が気になる方はできることからすぐに始めましょう。

AGAは医療機関で治療が受けられる脱毛症で、治療方法はおもに「投薬」「注入」「植毛」の3種類です。
厚生労働省が承認している治療は「投薬」治療のみで、薬の種類も「フィナステリド」と「デュタステリド」という2つの成分の内服薬と「ミノキシジル」という成分の外用薬に限られています。
AGAはジヒドロテストステロンの生成を抑えることで治療でき、ジヒドロテストステロンは5αリダクターゼと結びついて生成されるため、「フィナステリド」や「デュタステリド」などの5αリダクターゼ阻害薬の内服がおすすめです。
さらに、ミノキシジル外用薬を併用することで発毛効果を期待できるため、抜け毛の状態や頭皮の状態とともに生活スタイルなどその人それぞれの状態をしっかり診察してくれるAGA専門クリニックに相談しましょう。

抜け毛対策のためには、日常の生活習慣の見直しが大切です。
髪の成長には睡眠中に分泌される成長ホルモンが重要なため、睡眠時間を最低6時間は確保し睡眠の質を上げましょう。
適度な運動や入浴を習慣にして、入眠しやすい体を作ることでも睡眠の質は上がります。

ヘアサイクルの乱れを整えるためには、髪の毛に必要な栄養が豊富でバランスの良い食事が大切です。
髪の毛の主成分は「ケラチン」というタンパク質のため、動物性と植物性両方の良質なタンパク質を摂りましょう。
鶏のササミや納豆はカロリーや脂質が低いため積極的に摂れるといいですね、
さらに、髪の毛の生成に欠かせない亜鉛やヨウ素などのミネラルやビタミンB群と、頭皮環境を整えるビタミンCを併せて摂ることをおすすめします。
さらに、食事のバランスをよく規則的に摂ることで、頭皮に栄養が行き渡りやすくなります。
なるべく決まった時間に食事をして、髪にいいタンパク質や亜鉛などの栄養素を積極的に摂るようにしましょう。

抜け毛が増えたと感じた場合、脱毛症など薄毛に進行する危険な病気のケースがあるため注意が必要です。
そのため抜け毛に異常がないかチェックする習慣をつけ、異常を感じた場合はすぐに医療機関に相談しましょう。
AGA薄毛予防治療クリニックでは、みなさまそれぞれの症状や状態をしっかり診察するため、オンライン診療で相談しやすい環境を整えていますので、どうぞお気軽にお問合せください。