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【抜毛症の解説】気付かない間にやっているかも? トリコチロマニアについて。
みなさんは「抜毛症(トリコチロマニア)」という病気をご存じでしょうか。おそらく初めて聞く、という方の方が多いのではないかと思います。抜毛症は日本では認知度が低く、発症している患者様本人やそのご家族でさえも気づいていない場合も多いです。そのため病気自体をご存じである方が少ない印象で、「癖でなんとなく抜いちゃうが異常なことではないはず」「誰にでもある癖の中のひとつ」と軽く捉えてしまう方もいらっしゃいます。しかしこの抜毛癖を放置してしまうととても心身ともに危険な病気でもあります。今回はそんな抜毛症について正しい知識を付けて頂き対処して頂きたいという思いから、症状や対策に至るまで詳しく解説していきます。
■著者■ AGA薄毛予防治療クリニック医師
柏﨑 喜宣 (かしわざき よしのり)
名古屋大学医学部卒。創業以来日本全国のAGA・薄毛で悩む男女に対して適切な診察とAGA治療薬の効果最大化をしている。
これまでの薄毛解消の実績含めてプロペシア・ザガーロ・フィナステリド・デュタステリドなどのAGA治療薬の適切な処方に定評がある。
抜毛症(トリコチロマニア)ってなに?
日本語では「抜毛症(ばつもうしょう)」と呼びますが、もともとはフランスの医師により発見された病気で「トリコチロマニア」と名付けられました。英語発音でもトリコチロマニアと呼びますが、語源はギリシャ語です。病名は3つの語源から成り、トリコ(髪を)チロ(引っ張る)マニア(熱狂者)といった意味が含まれています。この抜毛症の疾患者は全体の人口の1~2%と言われ、特に小さい子供や女性が多いと言われています。全体数で見ると多くはありませんが、中には男性の患者様もいらっしゃいます。抜毛症とひとことに言っても、白髪を抜いたり、ムダ毛を抜いたり、ひげを抜いたり…といった行為はこの抜毛症に含まれません。精神的なストレスを感じ無意識に抜いてしまう症状がこの抜毛症に当てはまります。そのため精神障害のひとつとして解釈されています。また中には「食毛症」といって抜いた髪の毛を食べてしまう病気を併発されている方も少なくありません。食毛症について本記事では深くは触れませんが、髪の毛は人間の体で消化できないため、人間の体にとっては異物です。中には死亡例まであるとても恐ろしい病です。
抜毛症の特徴・症状
①無意識に髪の毛(まつ毛・眉毛)を抜いてしまう
抜毛症の患者様の抜毛例として、無意識に利き手側の手の届きやすい範囲で髪を抜いてしまうといった特徴があります。抜毛の対象は髪の毛だけではなく、時に眉毛やまつ毛に及ぶ方もいます。あるいは髪の毛は抜かないけど眉毛だけ抜いてしまう、なんて例もあります。
②髪の毛を自分で抜いている自覚はある
抜毛を行っている際に完全に無意識であっても、「いつ髪の毛を抜いているかは分からないが、自分の手で髪の毛を抜いてしまっている」と自覚がある抜毛症の方は意外にも多くいらっしゃいます。このパターンの場合、抜毛状況に対して自覚があるため抜毛症の可能性について自分で気付くことができます。反対に、抜く行為に対しても意識に対しても全く無意識という方もいらっしゃいます。この場合は周囲の方が気付く、もしくは自分で「原因不明の薄毛になっている」と気付いた事がきっかけで抜毛症の発覚に繋がるケースもあります。
③髪の毛を抜くことでストレスを発散している
このパターンの場合は、完全に抜くこと自体に意識がある状態です。日常生活のストレスを髪の毛を抜くという行為で発散しようとしてしまい、また抜毛後はストレスや抜毛行為に対して「すっきりした」と感じます。これらを繰り返すことで精神的に「髪を抜くとストレス解消になる」と感じてしまい、症状が進行してしまいます。
④できれば家族や知人に知られたくないと思っている
先ほど食毛症について少し触れましたが、髪の毛を食べようとする行為の真意には「髪の毛を抜いている証拠を隠したい」といった気持ちが込められていることが少なくありません。もちろんこれだけが食毛症の原因ではありませんが、「隠したい」という思いから髪の毛を食べてしまうといった行為に及んでしまうのです。また髪の毛を抜くことを「よくないこと」と認識している事が多く、その気持ちの後ろめたさから自分が抜毛症であることを隠したいと感じることもあります。抜毛症の症状が進み人目が気になるようになると、自主的に帽子やカツラで隠すといった行為も見られるようになります。
⑤やめたいと思ってもやめられない
抜毛症に対して自覚症状がある方は「やめたい」と思っていることがほとんどです。しかしその意に反して「気付いたら抜いてしまう」「ストレスに耐えられず抜いてしまう」というった事が起きてしまいます。人によっては一時的に抜毛行為が落ち着く方もいらっしゃいますが、そのほとんどが繰り返し行為を行い、抜毛症はゆるやかに一進一退を繰り返します。抜毛症の原因
抜毛症が発症してしまうメカニズムは現在も解明されていませんが、原因として家庭環境や社会生活などにおける「ストレス」ではないかと言われています。小さい子供に多いとされるのは、学校生活や家庭生活といった自身の力で抜け出せない環境がストレスを招きやすいためであるとも言われています。その結果上手にストレスを発散できない子供が抜毛という行為をしていまうのです。
貧乏ゆすりや足を組むといった癖や、ストレスを感じた際に瞬きが多くなったりつい手を強く握りしめてしまうなどの無意識に行ってしまう反応は誰にでもあるものです。抜毛症の方はそれが「髪を抜く」という行為になってしまっています。そのため「誰にでもある癖のようなもので問題はない」と思い放置してしまう方も多いのですが、抜毛症の場合は自身の身体を傷つける「自傷行為」のひとつと見なされています。これは放置してしまうと「数時間単位で長時間の抜毛を行ってしまう」「抜毛によって頭皮が傷ついてしまう」といった危険に繋がるためです。また「やめたいのにやめられない、ダメと分かっているのに抜いてしまう」という精神的から一種の「強迫性障害」と同様の見方をされるケースもあります。実際に患者様の中に抜毛症と強迫性障害を併発している例は少なくありません。どんな人が抜毛症になりやすい?
①ストレス耐性が低い人
ストレス耐性については個人差があり、ここでいう「ストレス耐性が低い」ということが「悪」というわけではありません。ストレス耐性といっても様々で、集団行動が苦手な人が社会生活にストレスを感じてしまう人もいれば、優しい心を持っているからこそ周囲の状況がよく見えすぎてしまいストレスを人一倍感じてしまうなどその人によりストレスの内容も違います。しかしそういったストレスの要因が積み重なることにより、抜毛症に繋がる可能性があります。
②ストレス解消法がない人(内向的な性格の人)
ストレスの解消法がスポーツや飲み会、ショッピングなど意識が外に向く方、または趣味がハッキリしている方であれば上手にストレスをコントロールできている可能性が高いです。しかし内向的で内気な方ほどストレスの解消法が「自分」に向いてしまう事が少なくありません。その結果抜毛してしまうケースも多くあります。お子さんが発症するケースについても大人ほどストレス解消の手段がなく、上手にコントロールできない、自分ひとりで問題を解決できないといったことが原因で抜毛行為を行ってしまうこともあります。
③完璧主義の人
全てを完璧にできていないといけない、という完璧主義の性格の方も要注意です。こういった方は社会的に見て自立しており周囲から見ても成功しているように見られがちですが、自分に厳しく完璧主義であることからストレスをためやすい性格でもあります。完璧主義の方こそ失敗した際のダメージが大きく、行き場のないストレスを自分に向けてしまう事もあります。
④不安症の人
人一倍注意深い性格でもありますが、普通の人が気に留めないような部分で悩んでしまったり、必要以上に不安に感じてしまったりと自分に負担をかけてしまうケースが多いのが不安症です。不安を感じる状況や度合いは個人差がありますが、不安な気持ちはが直接ストレスに繋がりやすく、知らない間に自分を追い込んでしまうケースが多く見受けられます。抜毛症の治療
抜毛症の診療科目は主に精神科、心療内科がメインになっています。治療法は主に「行動療法」と「薬物療法」です。
行動療法では、抜毛しているという事実をまずは患者様にしっかり受け止めて頂くというところからスタートします。その中で抜毛によるストレス発散方法を何か他の事で代用できないか模索し、患者様本人が可能な範囲で少しずつ置き換えを行い抜毛をやめるよう指導していきます。ここで重要なのが抜毛行為による治療を行っているという自覚と、自分の意志で治療を行っているという事実を受け入れることです。行動療法は気を紛らわすためではなく自覚し受け入れることで、無意識に行ってしまう行為を阻止します。また段階を追って「原因のストレス」を取り除くこともしていきます。抜毛症になるまでの過程は、その人個人の性格や家庭環境などにより大きく変わってくるため、必要であれば家族の協力をして頂きながら治療を行っていきます。
薬物療法では主にセロトニンを利用します。こちらは強迫性障害の方も利用する薬ですが、強迫性障害の方ほど効果がでにくいと言われています。状況を見て担当医の判断で抗てんかん薬が使われる例もあります。抜毛症とAGA(男性型脱毛症)の違い
この記事をご覧になられている方が男性であれば、「最近薄毛になっている事に気が付いたので自分が無意識に抜毛を行っているのではないかと不安だ」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。ここでは抜毛症とAGAの明確な違いについても解説していきます。
①抜毛症は自分で抜く、AGAは勝手に抜ける
大きな違いのひとつと言えば「抜け方」の違いです。抜毛症にも無意識・無自覚といった方も多いため見極めるのは難しいかもしれませんが、抜毛を行う際は利き手で抜きやすい範囲である頭頂部からおでこにかけて抜くパターンが多く、左右で毛髪量にばらつきがある場合があります。その点AGAは抜け方に特徴はあるものの基本的に左右差が発生しないため、おでこが均一に広くなっている、M字型に薄毛になっている、頭頂部だけ薄いなどといった部分的かつ比較的均一な薄毛の特徴が現れます。
②抜毛症はストレス、AGAはホルモンが原因
そもそも両者は薄毛に陥る原因が全く違います。本記事内で既に解説をしていますが抜毛症の場合、ストレスが原因となりその対処法として自傷行為、いわゆる抜毛をしててしまうといった背景があります。一方でAGAは、男性ホルモンの一種であるテストステロンと呼ばれるものと5αリダクターゼ(5α還元酵素)と呼ばれるものが結びつき「ジヒドロテストロン(DHT)」と呼ばれる男性ホルモンに変換され、このジヒドロテストステロン(DHT)がホルモン受容体に取り込まれて、毛母細胞の働きを低下させることにより薄毛・抜け毛を生じます。AGAも原因の一つとしてストレスがあげられますが、自発的に髪を抜いてしまう抜毛症とは発症のメカニズムが大きく違っています。抜毛症は対策できる!
①髪の毛を結んでおく
髪の毛が長い方であれば、髪の毛を結ぶのもひとつの対策になります。短髪の方に比べて髪の毛が長い方は、髪の毛が抜きやすい位置にあるためより無意識に手を伸ばしてしまいがちです。そういった事態を防ぐために髪の毛を後ろに一つに結ぶなど、無意識に抜けないような状況を作っておくことで万が一手が髪の毛に伸びてしまっても「今抜こうとしていた」と気付くことができ、予防することができます。
②帽子をかぶる
結ぶほど髪の毛が長くない方や男性の方は、帽子をかぶるのもオススメです。AGA治療では帽子はむれてしまうなど衛生上の面で常にかぶることをオススメはしませんが、抜毛症の場合は髪の毛自体をガードすることで抜毛を防ぐことができます。ゆったりしたものよりもできるだけ髪の毛にフィットするタイプの物の方が髪の毛は抜きにくくなります。しかし、帽子をかぶる行為がストレスを助長させてしまう方もいらっしゃいますので、無理に行う必要はありません。
③ストレス解消法を意識的に試す
これは抜毛症の行動療法のひとつ「ストレス解消法を抜毛以外に向ける」というものですが、自分で意識してできるようであれば行ってみてもいいかもしれません。ストレスや不安を感じた際に、「今とてもイライラしている」「不安を感じている」と自分で自分の状況を客観的に確認し、あえて「ストレスを感じたから〇〇をして解消してみよう」とストレス解消の行動に対して意識を向ける様にしてみましょう。こうすることで自らストレス、不安による抜毛を他の事にシフトチェンジすることができます。しかしこれも無理矢理行うと自覚症状がないまま抜毛症を悪化させてしまうケースもありますので、医師に確認して行うのが一番安全です。
④外に出る機会を増やす
抜毛症の特徴として「隠そうとする」というお話をしましたが、こういった方はできるだけ自分以外の人がいる空間に出るようにしましょう。無理に人に会ったりアウトドアに取り組むということではなく、近場のカフェにコーヒーを飲みに行ってみるとか、本屋さんに行ってみる、近所を散歩するというだけでも「自分以外の人の目」がある環境ですので効果はあります。できる限り自分にストレスが少ない方法や場所を選んで実践しましょう。
⑤家族や友人に行動を教えてもらう
抜毛症に悩む方の中には、家族や親しい友人の前では逆に安心してしまって抜毛をしてしまう、という方もいらっしゃいます。そういった方は精神的負荷のない状態で無意識で行ってしまっているケースがあります。また抜毛を目の当たりにしている家族や友人でも、「癖でやってしまうんだな」と軽く捉えてしまうケースもありますので、最近薄毛が気になるなという方で自覚症状がない方は、家族や友人に「一緒にいる時に髪の毛抜いてしまっていたら教えてね」と自分の行動を聞いてみるのもいいかもしれません。その上でもし無意識に抜毛してしまっているようであれば、止めてもらうようにしましょう。抜毛症は無意識に行ってしまう部分もありますが、抜毛をこれ以上行わないように対策することもできます。抜毛症かもしれないとお悩みの方は、すぐに実践できるものばかりですので是非試してみてくださいね。
薄毛に気付いたらすべきこと
ここまで抜毛症の症状や対処法、AGAとの違いについて解説してきましたが、「薄毛に気付いたor指摘された」時はまず最初に医療機関を受診するようにしましょう。抜毛症であれば心療内科、精神科が該当し、AGAであればAGA専用のクリニックや医院で治療を行っていくようになりますが、どちら分からないというようであればまずは皮膚科を受診してみるのもいいかもしれません。抜毛症でもAGAでも大切なのは「放置しないこと」です。医療機関を受診するということはハードルが高いと感じる方も多いかもしれませんが、ご自分の状態を確認し症状を悪化させないためにも必要なことです。
監修した医師の紹介
■この記事の著者■ AGA薄毛予防治療クリニック 医師 柏﨑 喜宣 (かしわざき よしのり)
名古屋大学医学部卒。創業以来日本全国のAGA・薄毛で悩む男女に対して適切な診察とAGA治療薬の効果最大化をしている。
これまでの薄毛解消の実績含めてプロペシア・ザガーロ・フィナステリド・デュタステリドなどのAGA治療薬の適切な処方に定評がある。
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