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AGAについて
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知って得する、髪の毛の基本
男性型脱毛症(AGA)をはじめ女性の薄毛、円形脱毛症、新型コロナウイルス感染症の後遺症としての脱毛症など脱毛をきたす疾患などが取り上げられることが多いですが、今回は私たちの髪の毛について深く掘り下げて考察していきたいと思います。
髪の毛の基本について知っておくことは大事なことで、知っておくことで脱毛を予防できることがあります。
■著者■ AGA薄毛予防治療クリニック医師
柏﨑 喜宣 (かしわざき よしのり)
名古屋大学医学部卒。創業以来日本全国のAGA・薄毛で悩む男女に対して適切な診察とAGA治療薬の効果最大化をしている。
これまでの薄毛解消の実績含めてプロペシア・ザガーロ・フィナステリド・デュタステリドなどのAGA治療薬の適切な処方に定評がある。
さまざまな機能をもつ「髪の毛」
毛髪は死んだ細胞の集まりであるにもかかわらず、体の表面から熱が逃げるのを防いだり、外からの物理的刺激を防ぎ、太陽の紫外線や熱から体を守り、ヘアスタイルを整えることで満足感を得たりコミュニケーションの一助となるなど多彩な機能を持っています。こうした機能は毛髪の持つケラチンなどの繊維状タンパク質とメラニン色素から構成されていることによるものです。このタンパク質が髪の毛の主な成分であり重要なのです。このタンパク質には多くの種類があり例えばホルモンは身体の代謝などに働くタンパク質、コラーゲンや髪の毛にとって大切なケラチンなど構造を支えるタンパク質、筋肉をつくり運動を担ったりするタンパク質、クリスタリンという透明化してレンズになったりするタンパク質などさまざまな種類があります。
実際どのようなたんぱく質が作られるのか?
上記のタンパク質は身体の中で合成されるのですが、重要なのは遺伝子によってどんな種類のタンパク質が作られるか決まるということなのです。つまり遺伝子が情報を伝えるということで、遺伝子はタンパク質の設計図の働きがあるといえます。さらに難しい話ですがこのタンパク質の設計図がmRNA(メッセンジャーRNA)と呼ばれる物質にコピーされ、その情報に基づいて細胞内のリボソームでタンパク質が生産されます。肉や魚を食べたからといってそれがそのままケラチンになって薄毛が改善されるわけではありません。またコラーゲンの多い食事をしてもそのままコラーゲンとなってお肌がプリプリになるわけではありません。摂取した食べ物は一度消化されてから吸収され肝臓で分解、解毒し、アミノ酸などタンパク質の原料となってからあらためてタンパク質が合成されるのです。それでもタンパク質の原料が少なければタンパク質の合成もできなくなるので食事をバランスよくとることは大切なことです
脱毛は予防が一番大切
毛髪は胎児期に皮膚が変化して出来ます。受精後約60日前後の胎児期に形態変化と呼ばれる現象が起こり、胎児の体表に500~600万の毛包が作られます。この毛包は毛髪を作り出す器官ですが、この後は新たに毛包が作り出されることはないのです。このため出生後、身体が大きくなっても毛包の数は一生涯を通じて変化はしないのです。当然頭皮の毛包の数も変わらないわけですから、脱毛症が進行したり重症化、瘢痕化したりして毛包が破壊されないようにしなければいけません。予防が一番というわけです。
毛サイクルがある理由は毛髪の長さの調整
毛髪が長くなると自然に抜け落ちます。毛髪は成長期、退行期、休止期という毛サイクルを繰り返します。この毛サイクルは何のためにあるのでしょうか。髪を作る細胞を休息させるためということもあるかもしれませんが、毛サイクルが存在する一番大きな理由はやはり毛髪の長さの調節であるといわれています。ヒトの頭髪の場合、成長期は長くて6年ほどといわれています。日本人の頭髪は一日に0.45㎜ほど伸びるので、6年間では約1mになる計算になります。例外的に毛髪の長い人も見えますがおおよそこの長さで抜けて生え変わるのです。眉毛や睫毛の成長期は一カ月ほどしかないため、ほぼ一定の長さでそろっています。毛サイクルで成長期が終了して退行期に入ると毛包が萎縮します。毛サイクルは複雑なメカニズムで毛包の細胞が変化していきますが、ここで重要な働きをする現象があります。それはアポトーシスと呼ばれ、細胞がまだ元気な状態であるにもかかわらず自殺プログラムが働いて死んでいく現象です。このアポトーシスにより毛包の一部が細胞死をおこし成長期から退行期に移行します。休止状態の毛包は一定時期になると残った細胞が増殖し、再び毛包から毛髪が成長してくるというサイクルを繰り返します。アポトーシスは聞きなれない言葉ですが身体のいろいろな部分で起こっています。薬や放射線などによって細胞に傷がつくと、傷が小さい時は修復されますが、傷が多すぎて修復できない時に細胞はアポトーシスを起こします。これは細胞がガン化したり異常な細胞へと変化したりするのを未然に防ぐ手だてであると考えられています。このようにアポトーシスは体にとって余計な細胞や不都合な細胞を排除する手段として、いろいろな時期にさまざまな組織で行われています。ヒトの手は、はじめ(発生期)はしゃもじのような形をしているが、指と指の間に当たる部分の細胞が計画的に死に、残された部分が指になるというようにアポトーシスは身体の形成にも深くかかわっているのです。また外から刺激をして脂肪細胞にアポトーシスを起こして痩せるというのがうたい文句の瘦身術もあるようです。アポトーシスという言葉は憶えにくいかもしれませんが、知っておくといろいろ話題が増えると思います。今回の毛髪の話は少し分かりにくかったかもしれませんが、胎児期にできた毛包が成長し、髪の毛を作り続けていくのは毛髪を作る細胞にとってはとても複雑で繊細な作業なのです。このことからも頭皮を良い環境に保って、毛髪を作る細胞に十分働いてもらうということが薄毛の予防には大切なことなのです。
幹細胞について
幹細胞という言葉を一度は聞いたことがあると思いますが、何のことか理解するのは専門家でないと難しいかもしれません。この幹細胞について簡単に言うと、それぞれの組織を構成する細胞を生み出す母親のような細胞のことです。例えとしてはハチの巣の中の女王バチみたいなものでしょうか。最近の研究で毛包にも幹細胞があり、これが毛髪の伸長と毛周期の進行に大変重要であることがわかってきました。
幹細胞の重要性
私たちの身体を構成する細胞の多くは無限に増殖することができず、一定回数細胞分裂するとそれ以上細胞分裂による増殖ができないようになっています。細胞が何回細胞分裂したかを数える仕組みがあるからなのですが、その仕組みは細胞の染色体の末端にあるテロメアと呼ばれるものが働いているからなのです。このテロメアという言葉は聞いたことがないかもしれませんが、昔あった日めくりのカレンダーのように一回細胞分裂をすると一枚ちぎり取っていくみたいな感じで減っていきます。実際テロメアはアミノ酸が連なってできているのですが、このアミノ酸の列が短くなってゆき、ある長さまで短くなると細胞分裂ができなくなり細胞の増殖が止まってしまいます。どうしてこんなややこしいシステムになっているのでしょう。そこにはいろいろな理由があるのですが、一番大切なことは細胞のガン化を防ぐことだと考えられています。ガン化は細胞が無秩序に増殖し続ける状態になったということですが、放射線や発がん物質により遺伝子が突然変異することによっておこるのです。また細胞が増殖する際の遺伝子情報のコピーミスもガンの原因の一つです。一度間違ってコピーしてしまいますと、その後は修正がきかないので、細胞分裂が進むほどガンのリスクが高くなっていくのです。細胞増殖の回数に上限を作っていくことでガン化のリスクを軽減させており、これがテロメア系を進化させてきた理由と考えられています。難解な話ですが、これが幹細胞となんの関係がるかもう少し堀下げてみましょう。細胞分裂に限りがあると、血液の細胞や粘膜、皮膚の表皮細胞のように毎日膨大な数の細胞を生み出しては消費しているところでは細胞が足りなくなってしまうことになります。それでは身体を維持できなくなってしまいますので、ここで細胞を供給するための特殊な細胞が用意されているのです。これが幹細胞です。幹細胞は大人になるとめったに細胞分裂をしないで大切に保護されています。実際には幹細胞の子孫にあたる細胞が盛んに増殖して細胞を供給し、幹細胞はその子孫細胞が不足したときにだけ増殖し子孫細胞を増やすようになっているのです。子孫細胞は盛んに増殖し、周囲の環境に応じて色々な種類の細胞に分化(変化)できるのです。この子孫細胞が突然変異して正常な細胞を作れなくなっても、この細胞をアポトーシスによって排除し同時に無傷の幹細胞から子孫細胞を作れば済むようになっています。アポトーシスとは前回書きましたが、細胞がまだ元気な状態であるにもかかわらず自殺プログラムが働いて死んで行く現象のことで、死んだ細胞は跡形もなく消えてしまいます。更に驚くべきことに幹細胞は無限に増殖できるようになっているのです。幹細胞にもテロメアがありますが、テロメアが短くなるとテロメアーゼという酵素を使って短くなったテロメアを回復させる事で無限に細胞分裂できると考えられています。どこかの国のトップの人みたいに自分で任期を好きなだけ延長できるのと似ているかもしれません。そして幹細胞の生み出した子孫細胞は毛髪を構成しているいろいろな部位の細胞に変化していきます。幹細胞はいろいろな細胞に変化できる細胞で、こういう細胞を未分化な細胞といいます。未分化細胞であるがゆえに毛髪のみならず同じ幹細胞が皮脂腺や表皮にまでなることができるのです。幹細胞はケガで皮膚がえぐれたり、火傷によって表皮が死んでしまったりといった非常時には、これらの組織を再生するための細胞としての役割も持っているのです。まとめていうと幹細胞は皮膚の比較的深いところにあり、毛母細胞という盛んに毛髪を作り出す細胞を作ったり、毛髪の部品となる多くの細胞を作ったり、上方に移動し皮脂腺や皮膚そのものを作ったり、皮膚が広く大きなダメージを受けたときに皮膚を再生させたりと、すごくスーパーで万能な細胞だということです。幹細胞は大事ですから皮膚の少し深いところに保護されており少々ケガをしてもすぐに損傷されないようになっていますが、血流が低下したり、強い炎症が起こったり、栄養状態が悪くなったりと皮膚の環境や状態が悪くなると幹細胞も弱ってしまします。日常的に頭皮や毛髪に異常がないか注意しケアをして幹細胞を大事に扱うようにするのが健康な毛髪を保ち、薄毛の予防になると思います。
毛髪は何からできているの?
毛髪は何からできているのかみてみることにしましょう。日本人の髪の毛の直径は約70~100μm(マイクロメートル)すなわち0,07~0,1ミリメートルと細いのですが、髪の毛一本であっても極めて複雑で繊細な構造をしています。髪の毛はイオウ原子を多く含む繊維状のタンパク質からできています。このたんぱく質をケラチンといいます。ケラチンという言葉は聞いたことがあるかもしれませんが、髪の毛以外では爪などもケラチンでできています。動物では角や蹄(ひづめ)、羽根など環境から身を守るための繊維性の組織ですが、それぞれの部位で構造が異なります。ヒトの髪でみてみますと、髪の毛は3の層からなり、一番外側をキューティクル、その内側がコルテックス(皮質)、中心部はメデュラ(毛髄)になっています。真ん中のコルテックス(皮質)部分は主にケラチン繊維でできており、毛髪の85~90%を占め、髪の毛の大部分はコルテックということになります。コルテックの中には髪の毛のもとになる部分として、らせん状の形をしたタンパク質2本が互いに巻きついてロープを作り、更にもう一対の同じロープが集まって4本になる(4量体と呼ばれる)のですが、これを1単位として8単位が集まり円筒状となりミクロフィブリル呼ばれる繊維を作っています。この32本の細いたんぱく質の集まりであるミクロフィブリルの直径がなんと10nm(ナノメートル)要は100万分の1ミリメートルなのです。このミクロフィブリルが多く集まって毛髪の元であるケラチン繊維になっています。髪の毛の色を決めるメラニン色素もコルテックスの中に含まれています。もっとも外側のキューティクル(毛小皮)はコルテックスの周囲にありコルテックスを守っています。このキューティクル細胞は一つ一つが小さく、厚さは0,5㎛(マイクロメートル)これは1ミリメートルの2000分の1という薄さです。キューティクルは無色透明でとても硬くできていて、1枚でコルテックスの2分の1から3分の1を包み込んで6層から10増重ね合わさってまるでウロコのように髪の毛全体を覆っています。産毛などの軟毛ではキューティクルは3層から5層になっています。キューティクルはコルテックスを保護し、髪の毛のつや、手触り感をだしています。メデュラ(毛髄)は中心にありスポンジ状の構造をしていて、繊維を軽くし、曲げ強度を強くする役目があるといわれています。
髪の毛の構造にも意味があった
ここまで大まかな髪の毛の構造は分かってもらえましたか。コルテックスやキューティクルにはそれぞれの役割がありますが、もう少し細かくみてみましょう。毛髪の屈曲強度(曲げた時の強さ)はどんな天然の繊維や、よく使われている合成繊維よりも勝っています。この曲げても折れない頑丈さや強靭性は髪の毛の繊維の構造と深く関係しています。強い力がかかった時、部分的に傷ができると成長とともに破壊されてしまうのですが、髪の毛はコルテックスの部位で、ミクロフィブリルの間に適度の柔軟性のある樹脂が入っている構造を持つケラチン繊維のため傷がつきにくく破壊されにくいのです。またケラチン繊維は多量の水を含むことができます。ケラチン繊維の表面は撥水性と呼ばれ水をはじくのですが、表面には水を取り込んだり排出したりする小さな出入口があり、ケラチン繊維の99%は親水性の繊維であることから常に水分を保つ機能があるのです。キューティクルは、その一枚がさらに細かい5層の構造になっていて、その5層は細胞膜複合体という物質で接着されています。この一枚一枚が先ほども書いたように7~10層にも重なってコルテックスを覆っているので、外からの刺激から内部を保護できるのです。しかし濡れていると柔らかくなるため、こすれたり摩擦が加わると、キューティクルは欠けたり剥がれたりするので注意が必要です。髪の毛の先ほどキューティクルの枚数が減ってくることが多いようです。髪の毛は洗った後はきちんと早く乾かしたほうがキューティクルは、はがれにくくなり髪を守ることになるのです。キューティクルがはがれ髪の毛の繊維が破壊されると枝毛のようになり元に戻すことができなくなります。
髪の毛の色について
ここでもう一つ髪の毛の色について考えてみます。毛髪には白髪から黒髪まで様々な色がみられますが、こうした毛髪の色はすべてメラニンの種類と濃度のみによって決められています。メラニンには大きく分けてユーメラミンとフェオメラミンの二種類があります。黒から黒褐色のユーメラミンと、黄色から赤褐色のフェオメラミンです。黒髪はユーメラミンが赤毛ではフェオメラミンが主体となるのですが、通常その二つが様々な比率で混じりあっていると考えられています。また毛髪のメラニン含有量が少なくなると、当然毛髪の色は薄くなり薄茶色から金髪になります。どうして二種類のメラニンがあるのでしょうか。メラニンは毛包の中にある毛包色素細胞と呼ばれる細胞で作られます。メラニンの合成には三種類の酵素が関与しユーメラミンとフェオメラミンを作っています。金髪は北欧の人に多いのですが、その人たちは遺伝的に三つの酵素のうち一つの働きが弱く、そのため眼の虹彩にも少量のメラニンがあるだけで結果として青い眼を持つことになるのです。白髪の場合はどうでしょう。もとは黒髪であったものが白毛化するわけですが、毛髪にメラニンが供給されないということです。どうしてなのかまだ十分ほとんど解明されていませんが諸説あります。メラニンを作る毛包色素細胞が自然死を起こして消滅してしまった、毛包色素細胞はあるが酵素が働かずメラニンが十分作れないため、毛包色素細胞でメラニンは作れるが毛母細胞という毛髪を作る細胞にメラニンが移動しない等です。今後解明されていくと思いますが、ヒトの体は髪の毛一本にしても複雑にできているものですね。髪の毛は繊細で複雑なので優しく丁寧に扱っていくのが大切だということです。
抜け毛・脱毛で困ったらまずは医療機関へ
薄毛にはいろいろな原因、いろいろな治療法がありますので、一人で悩まずに専門のクリニックでご相談されることが大切です。
医師紹介
■この記事の著者■ AGA薄毛予防治療クリニック 医師 柏﨑 喜宣 (かしわざき よしのり)
名古屋大学医学部卒。創業以来日本全国のAGA・薄毛で悩む男女に対して適切な診察とAGA治療薬の効果最大化をしている。
これまでの薄毛解消の実績含めてプロペシア・ザガーロ・フィナステリド・デュタステリドなどのAGA治療薬の適切な処方に定評がある。
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