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医師が徹底解説-代表的な未承認のAGA治療薬と注意点について
代表的な未承認のAGA治療薬と注意点について
「最近髪が薄くなった気がする」「シャンプー中の抜け毛が増えた」といった症状が気になった成人男性には、AGA(男性型脱毛症)の可能性があります。AGAは成人男性の3人に1人に発症する脱毛症であり、早期発見や早期治療で改善が期待できます。現在日本で認められているAGAに有効な治療は、内服薬と外用薬の限られた医薬品による投薬治療のみです。しかし巷では安く買えるという理由から、日本国内未承認の薬を個人輸入などでAGA治療薬を入手し使用しているケースがあります。また、クリニックなどでも医師の判断で日本国内未承認の医薬品でAGA治療を行なっているところもあり、「未承認でも処方できるの?」と疑問を持っている人もいるのではないでしょうか。
そこで今回はAGA治療薬について、承認薬と未承認薬の違いや種類を紹介するとともに、未承認薬や個人輸入による薬を使用した場合のリスクや注意点について詳しく解説します。AGA治療をこれから始めたいという人も、現在治療中で今後未承認薬や個人輸入を利用したいと考えている人も、安心安全なAGA治療の参考にしてください。【監修医師の紹介】
■この記事の著者■ AGA薄毛予防治療クリニック 医師
柏﨑 喜宣 (かしわざき よしのり)
名古屋大学医学部卒。創業以来日本全国のAGA・薄毛で悩む男女に対して適切な診察とAGA治療薬の効果最大化をしている。
これまでの薄毛解消の実績含めてプロペシア・ザガーロ・フィナステリド・デュタステリドなどのAGA治療薬の適切な処方に定評がある。
未承認薬と承認薬の違い
日本における医薬品には「日本国内承認薬」、「日本国内未承認薬」、さらに日本国内承認薬の中にも「適応外薬」という区別があります。区別の基準や安全性など、それぞれについて詳しくみていきましょう。さらに、AGA治療薬の添付文書などで目にすることがある「薬価基準未収載医薬品」と記載されている医薬品についてもどんなものか解説します。
承認薬とは
現在日本において「承認薬」とは、厚生労働省の承認を得て流通している医薬品のことを指します。厚生労働省の承認を受けるためにはまず「製品の必要性や開発の経緯」、「臨床試験などの詳細」、「品質管理方法」などその薬の有効性や安全性を示した上で、臨床試験が厚生労働省で定めた基準を満たしているかなど厳しく精査されます。その後薬について独立行政法人医薬品医療機器総合機構「PMDA」など専門家の審査や、薬の製造所についての品質管理や供給能力などを審査されるため、承認までには早くても半年程度要すると言われています。
外国で既に販売されている医薬品に関しても同様で、日本に輸入し販売する場合は承認の申請をして厳しい審査を受けたのち、厚生労働省が承認します。
未承認薬とは
未承認薬とは、日本において厚生労働省が承認、販売していない医薬品のことです。未承認薬と一括りに言っても、意味合いが違うものがありますので以下をご覧いただきましょう。
①外国で安全性が認められ、既に販売されている医薬品
外国にはそれぞれ、アメリカのFDA(アメリカ食品医薬品局)、オーストラリアのTGA(薬品医薬品行政局)、フランスのANSM(国立医薬品保健製品安全庁)といった、日本における厚生労働省に相当する機関があり、医薬品の承認や販売許可を決定しています。そのため、ここで言う「未承認薬」とは各国の臨床試験で効果が認められ、さらに安全基準をクリアしていますが、日本の臨床試験基準や安全基準をクリアしていない医薬品ということになります。
これらの未承認薬においてはAGA治療薬のみならず、ED治療薬やがん治療薬などさまざまな種類があります。患者様の中には、症状により治療効果を求めて未承認薬の使用を希望するケースは多くみられます。医師の判断で独自に輸入し処方している場合もありますが、未承認のため全額自己負担となります。②外国でも日本でも承認されておらず、基礎研究や臨床試験による安全性の確認が十分に行われていない医薬品
医薬品を開発し販売するためには、効果効能の程度や副反応の有無や程度について研究や臨床試験を十分行い効果と安全性を確立することが必要です。しかし、研究や臨床試験には高額なコストがかかることなどを理由に、臨床試験のプロセスを行わず各国の承認を得ずに販売している医薬品があります。多くが承認薬の偽造品であり、製造過程や品質管理に問題がある場合も多いため注意が必要です。適応外薬とは
薬自体は厚生労働省で承認を受けて既に販売されているものでも、適応となる病気が限られているため病気によっては治療薬と認められないものがあります。例えばAGA治療薬の「ザガーロ」と前立腺肥大症治療薬の「アボルブ」は同じデュタステリドを主成分とした薬ですが、それぞれ適応疾患が決まっているためザガーロを前立腺肥大症の治療に使用したり、アボルブをAGAの治療薬として使用することはできません。このように、適応となる病気以外の治療目的で使用する薬を「適応外薬」としています。
薬価基準未収載医薬品とは
「薬価基準未収載医薬品」は、未承認薬ではありませんが保険適応外の医薬品であることを示しています。薬価基準とは保険医療に使用できる医薬品の品目とその価格を厚生労働大臣が定めたもので、「薬価基準未収載医薬品」保険診療を行う医療機関が処方した場合でも保険適応外になります。薬の外箱や添付文書に記載がありますので、自分が所持している薬が該当するか気になったらチェックしてみましょう。
AGA治療薬の種類と承認薬一覧
ここからは、現在の日本におけるAGA治療薬の承認薬について解説します。そもそもAGAとはどんな病気か、原因や症状に合わせた治療薬について知った上で、承認薬にはどんなものがあるか見ていきましょう。
AGAの原因とメカニズム
・AGAの原因:AGAは「Androgen(男性ホルモン)genetic(遺伝性)Alopecia(脱毛症)の略あることからも分かる通り、原因として「男性ホルモン由来」と「遺伝」が挙げられます。
・AGAのメカニズム①男性ホルモン由来:男性ホルモンの一種である「テストステロン」が5αリダクターゼ(5α還元酵素)と結びついて「ジヒドロテストステロン」に変換され、男性ホルモン受容体と結合します。すると「脱毛因子(TGF-β)」が生成され、髪の元である「毛母細胞」や髪の発育の指令を出す「毛乳頭細胞」に働きかけることで抜け毛や薄毛の症状が出ることがわかっています。
・AGAのメカニズム②遺伝:AGAは男性ホルモンの分泌量ではなく、5αリダクターゼの活性や男性ホルモン受容体の感受性が高ければ高いほど発症しやすいことがわかっており、親からの遺伝とともに母方の男性親族からの隔世遺伝によることが多いのもAGAの特徴です。
AGAの症状と進行パターン
・AGAの症状:AGAは「抜け毛が増える」「抜け毛が細く短い」といった初期症状から始まり、「頭皮が透けて見える部分がある」「抜けた部分から毛が生えてこない」といった症状に進む進行性の病気です。頭皮に炎症や痒みなどの症状は見られず、痛みを伴うこともないため外見的な変化で症状が判断できます。
・AGAの進行パターン:AGAには、額の左右に抜け毛や薄毛の症状が出て中央は髪が残る「M字型」、頭頂部を中心に円状に抜け毛や薄毛の症状が出る「O字型」、M字型とO字型を併発する「U字型」という3つの進行パターンに分けられます。臨床診断でも使われることが多い「ハミルトンノーウッド分類」においてⅠ型からⅦ型までの進行分類が示されており、当てはまる段階により重症度を測ることができます。* *男性型脱毛症の内科的治療参照(https://www.ibaho.jp/documents/newspaper/hns_201505_l.pdf)
日本国内におけるAGA治療承認薬一覧
・プロペシア:日本で初めてAGA治療薬として承認された内服薬で、1997年にアメリカのメルク社によって開発され、日本では2005年に厚生労働省に承認されています。主成分は「フィナステリド」でⅡ型5αリダクターゼを阻害することでAGAの治療効果が認められています。
・フィナステリド錠:プロペシアのジェネリック医薬品で、2022年時点でファイザー社など11社により発売されています。主成分はフィナステリドで、プロペシアとは添加物の違いがありますが効果効能は同じでAGA治療薬として厚生労働省に認められています。承認薬は商品名を「フィナステリド錠〇〇(製薬会社名)」とするルールがあるため、商品名で承認薬と判断できるでしょう。
・ザガーロ:2015年に厚生労働省に承認された内服薬で、イギリスのグラクソスミスクライン社によって開発されています。主成分は「デュタステリド」でⅠ型+Ⅱ型Ⅱ型5αリダクターゼを阻害することでAGAの治療効果が認められています。
・デュタステリドカプセル:ザガーロのジェネリック医薬品で「デュタステリドカプセルZA」という商品名で岩城製薬や東和薬品などから発売されています。主成分はデュタステリドで、AGA治療薬として厚生労働省に承認されています。こちらも商品名を「デュタステリドZA〇〇(製薬会社名)」とするルールがあります。
・リアップ:1999年に厚生労働省に承認された外用薬で、主成分は「ミノキシジル」です。「リアップ」という商品名で大正製薬がミノキシジル1%含有外用薬を一般用医薬品として開発販売しています。その後再審査にてミノキシジル5%含有の「リアップ5」が承認され販売されています。
・ミノキシジル外用薬(ジェネリック):リグロEX5(ロート製薬)、リザレックコーワ(興和薬品)、スカルプDメディカルミノキ5(アンファー)、ミノアップ(東和)、ミノキシジルローション5%(JG)など商品名と製薬会社がそれぞれ違いますが、厚生労働省が承認しているミノキシジル含有外用薬は1%と5%のみです。
代表的なAGA未承認薬
AGA治療薬には日本国内で承認されている以外にも、外国で承認されているものや承認されていないにもかかわらず流通しているものがあります。ここでは代表的なAGA未承認薬の商品名を紹介していきます。
未承認内服薬の代表的な商品名一覧
・フィナステリドを主成分として製造されている未承認内服薬の代表的な商品名
「フィンペシア」「フィナロ」「フィナバルト」「フィナクス」「エフペシア」「フィナロイド」など
・デュタステリドを主成分として製造されている未承認内服薬の代表的な商品名
「アボルブ」「デュタステリドAV」「デュプロスト」「ベルトリド」「デュタボルブ」など
・ミノキシジル主成分として製造されている未承認内服薬の代表的な商品名
「ミノキシジルタブレット」「ミノタブ」「ロニテン」「ミノクソール」「ロニタブ」など
*ミノキシジルの内服は日本ではAGA治療として推奨されておらず、承認薬は存在しません。そのためミノキシジル含有の内服薬は全て未承認薬となります。未承認外用薬の代表的な商品名一覧
「ロゲイン」「ツゲイン」「フォリックスFR」「ミントップ」など
*日本では外用薬におけるミノキシジル含有率は1%か5%のみを承認薬としていますので、含有率が1%もしくは5%以外の外用薬は全て未承認薬となります。未承認薬を使用するリスク
AGA治療は保険適応外のため、薬代はもちろん診察料や検査費なども全て自己負担になります。そのためなるべく治療費用を抑えたいと、未承認薬の使用を検討することがあるかもしれません。また、未承認薬の中にはAGA治療における有効成分の含有量が承認薬よりも多いものが存在するため、治療効果を高めたいと未承認薬を選択するケースもあるようです。しかしながら、未承認薬には日本の基準での安全性が確立されていないため、使用にはリスクが発生する可能性がありますのでしっかり覚えておきましょう。
未承認薬のリスク①:薬の作用や副反応が強く出る可能性がある
日本国内でも外国でも未承認の薬は、製造方法や製造過程の審査を通っていないため成分量が規格よりも多く入っている場合があります。この場合、薬の作用や副反応が強く出る場合があり大変危険です。薬の作用が強く出た場合は、頭髪のみでなく全身の毛が増えたり濃くなることなどがあり、外見の変化に影響が出る可能性があります。副反応としては、肝機能障害や性機能障害の他にアレルギー症状が強く出る可能性があり、生命にかかわることもあるため十分注意が必要です。
未承認薬のリスク②:不純物混入や添加物による健康被害の可能性がある
同じく日本国内でも外国でも未承認の薬には製造過程で不純物が混入している場合があり、服用によって体に害を及ぼす可能性があります。また、発がん性のリスクがあるなどの理由で日本では使用が禁止されている添加物が使われている場合もあるため、注意が必要です。AGA治療は長期にわたることが多く、薬の服用期間も必然的に長くなりますので安全な薬の服用をおすすめします。
未承認薬のリスク③:料金が高額になる場合がある
AGA治療薬は保険適応外のため、販売元が自由に料金を設定することができます。承認薬は医薬品販売業者からの正規ルートで仕入れ取り扱う医療機関が多いため、ネットなどで調べれば相場がわかりますのでどこで処方してもらっても料金に大きな差がないと言えます。しかし未承認薬の場合は医師が個人輸入をして処方することが多く、場合によっては高額な費用がかかることがあります。承認薬よりも有効成分が多く含まれているなどの理由から、症状に応じて未承認薬を使用するクリニックもありますが、費用が高額になると治療の継続が難しくなることも考えられますので、自分の症状と治療効果への期待値や予算などしっかり相談して本当に必要かをよく検討しましょう。
個人輸入の危険
未承認薬を使用する方法として、取り扱いクリニックで処方してもらう以外に「個人輸入して使用する」という手段があります。個人輸入はネット上で完結し、カード決済などで簡単に行えるため診察の手間や費用がかからず利用を検討する人がいるようです。しかし、個人輸入にはトラブルが多く、命にかかわる被害の可能性もありますので「髪の毛の薬だから全身に影響しないだろう」などと安易に考えて個人輸入を利用することはおすすめできません。個人輸入で起こり得る危険について詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください。
個人輸入の危険①:薬自体が偽物の可能性がある
個人輸入の相手は海外の業者であり信頼性が乏しい会社も多く、支払いしても商品が届かないことや届いた薬が別物や偽物であったというトラブルが多くみられます。問い合わせや返金などの対応に応じてもらえない悪質な業者も多いため、業者選びには注意が必要です。
個人輸入の危険②:自分の症状にあった用法用量がわからない
AGA治療薬を取り扱うクリニックでは、医師が個人の症状を診断し適切な薬を処方してくれますし、定期的な診察を受けることにより症状の変化に対応した処方の変更も可能です。しかし個人輸入でAGA治療薬を使用する場合は症状と用法用量が適切か判断することができません。AGAは進行性の病気で症状や進行速度はかなり個人差があるため、一度処方してもらった用法用量を継続しても効果が期待できない可能性もあります。自己判断で治療してかえって症状が悪化する可能性もありますので、AGA治療薬は医師の診断のもと使用することをおすすめします。
個人輸入の危険③:薬の副反応の判断や対処ができない
AGA治療薬を使用した際、通院中であれば体の異変についてすぐに相談することができます。しかし個人輸入では体の異変を感じてもそれがAGA治療薬の副反応なのか、別の原因なのか自分では判断することができず、体の異変について病院にかかったとしても処方されたAGA治療薬ではないため因果関係ははっきりしないでしょう。副反応には肝機能障害など重篤なものもあるため、異変に気づいた時にすぐに対処できない個人輸入は大変危険だと言えます。
個人輸入の危険④:重度の副反応が出ても「医薬品副作用被害救済制度」が使えない
日本の承認薬を使用して重篤な副反応が出てしまった場合、「医薬品副作用被害救済制度」という医療費や年金が給付される制度があります。これは保険適応でも適応外でも承認薬であれば対象になりますので、AGA治療薬も例外ではありません。しかし、未承認薬ではこの制度は適応されないため万が一入院するような重篤な副反応が出ても給付金は受けられないでしょう。AGA治療費のコストを抑えようと未承認薬を個人輸入したために、副反応で高額な治療費が必要になったとあっては元も子もありません。医薬品は専門医の処方を受けて安心して使用することをおすすめします。
偽物のAGA治療薬に注意
個人輸入において問題になっているのが「偽物が多い」ということです。厚生労働省のHP *でも注意喚起されており、重大な社会問題になっていることがわかります。偽物のAGA治療薬を使用し、思わぬ健康被害やお金の損失を防ぐためにも、偽物の医薬品について知っておきましょう。 *厚生労働省HP(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/kojinyunyu/index.html)
偽物と未承認薬の違いとは
偽物とは「薬効成分が全く含まれていない」「薬効成分が過剰に含まれているもの」「薬効成分含有量が少ない」「異物や雑菌などが混入されている」薬のことを指します。
対して未承認薬は先述のとおり「日本国内において厚生労働省が承認していない薬」のことを指しますので、未承認薬の中には偽物も含まれているという位置付けになります。安心安全なAGA治療のために
薄毛や抜け毛に悩まされていると、効果の高い治療を求めていろいろな情報を検索したり人に相談することでしょう。その中には未承認薬での治療を勧める情報もあるかもしれません。しかしAGAは症状や進行に個人差があり、他人の治療をそのまま行っても効果が得られるとは限りません。重要なのはどの薬を使うかよりも、自分の症状に合った適切な治療をきちんと行うことです。そのためにはAGA専門クリニックで現状をきちんと診断の上、適切な治療を受けることがとても大切です。AGAの治療は長期にわたることが多いため、ストレスなく続けやすいことは大事なポイントになります。もし通院が難しい場合などは、自分の都合に合わせられるオンライン診療を利用してはいかがでしょう。
監修した医師の紹介
■この記事の著者■ AGA薄毛予防治療クリニック 医師
柏﨑 喜宣 (かしわざき よしのり)
名古屋大学医学部卒。創業以来日本全国のAGA・薄毛で悩む男女に対して適切な診察とAGA治療薬の効果最大化をしている。
これまでの薄毛解消の実績含めてプロペシア・ザガーロ・フィナステリド・デュタステリドなどのAGA治療薬の適切な処方に定評がある。
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